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「京都府プロフェッショナル人材戦略拠点オンラインセミナー 副業・兼業人材を活用した事業推進方法と活用事例の紹介セミナー」 開催報告

令和3年7月27日(火)に、「副業・兼業人材を活用した事業推進方法と活用事例の紹介セミナー」を開催いたしました。

京都府プロフェッショナル人材戦略拠点は、京都府内の中小企業の皆様に、「攻めの経営」への意欲を喚起し、プロフェッショナル人材の活用による成長戦略実現を促す目的で、公益財団法人京都産業21内に平成27年12月1日に設置されました。

今回のセミナーのテーマは「副業・兼業人材の活用」です。企業経営において自社のみで課題解決できないような場合、これまでは経営コンサルティング会社やそれに類する外部業者に依頼して解決する企業も多かったことでしょう。しかし、昨今の副業・兼業人材市場の興隆により、新たに「副業・兼業人材を活用して自社の課題を解決する」という選択肢が出てきました。

こうした事情を鑑みて、今回のセミナーでは株式会社ローカルフラッグ代表取締役の濱田祐太様を講師にお招きして、自社の課題解決のために副業・兼業人材を活用するに際してのポイントや事例についてお話いただきました。また、株式会社松林代表取締役の松林威寿様、株式会社大滝工務店代表取締役の大滝雄介様にもご登壇いただき、両社の副業・兼業人材の活用事例についてもお話しいただきました。

以下、当日のプログラムに沿って、セミナーの概要をご紹介いたします。

1.事業説明

最初に、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点マネージャーの岡本より、同事業についてご説明させていただきました。

当拠点では、京都府内中小企業等の成長・発展を支援するために、プロフェッショナル人材とのマッチングサポート事業を運営しております。これまでに累計150件以上の成約実績がございます。

また、2020年度より新たに「副業・兼業によるプロフェッショナル人材の紹介」も開始し、これまでの成約実績は10件を超えました。副業・兼業方式によるプロ人材の確保は、コロナ禍によって働き手の意識や働き方そのものが大きく変化するなかで、中小企業にとっても経営課題解決のための身近な手法のひとつとなり、活用する動きが急速に拡がっています。

当拠点では、今回登壇いただいた株式会社ローカルフラッグを含む5つの特色ある人材仲介事業者が登録されています。当拠点の担当者が経営者の皆様の課題やお悩みをお伺いした上で、副業・兼業人材のリストをご紹介いたします。また、担当者と人材紹介事業者を交えてご相談をお受けすることも可能です。事業者の皆様が要件とマッチした副業・兼業人材を発見できるよう、適切な伴走支援をいたします。(詳細はプロフェッショナル人材戦力拠点事業のパンフレットをご覧ください。)

2.濱田祐太様による基調講演

2.濱田祐太様による基調講演

基調講演では、株式会社ローカルフラッグ代表取締役の濱田祐太様より、「副業・兼業人材の導入と活用について」というテーマでご講演をいただきました。

まずは、副業人材の動向について。2018年に厚生労働省がモデル就業規則を変更したことを機に日本全体で副業の解禁が進んだことや、それにあわせて多くの大企業においても副業解禁が進み、地方企業での副業に興味がある優秀な人材が労働市場にも増えてきていることなどをご説明いただきました。

地方での副業人材募集の事例として、例えば宮津市では、「観光まちづくり」、「関係人口づくり」、「DX推進(業務改革)」の企画・戦略立案を担う副業人材募集に対して、全国から470名もの応募があり、7名の採用があったそうです。また、株式会社ローカルフラッグ運営の「ふるさと兼業」を通じて手がけた老舗製菓店では、それまで自社運営のSNSのフォロワー数がなかなか増えないことが課題でしたが、参画した兼業人材の尽力によって、それまで14名しかいなかったフォロワー数が3,500名まで増加したそうです。「副業・兼業人材という切り口で人材を募集すれば、新卒・中途採用では獲得できないようなスキルの高い優秀な人材を採用できる可能性が非常に高い」と強調されました。

次に、副業人材の特徴についてご説明いただきました。従来のイメージでは、副業人材は「本業の片手間でやる」という印象を持たれがちでしたが、現在の副業人材の位置付けは「正社員とコンサルタントの中間のような存在で、当事者意識を持ち、主体的に会社と関わる存在」とご説明をいただきました。副業人材への報酬は月間3〜10万円が多いですが、プロボノ(ラテン語で「公共善のために」を意味するpro bono publicoの略)として無報酬で参画する方もおられるそうです。

さらに、副業人材の採用の注意点についてご説明いただきました。「スキルが高い人材が多いとはいえ、副業人材を受入れれば自動的に会社の課題が解決される訳ではなく、人材を採用する企業側の受け入れ準備が非常に大切である」と強調されました。また、副業人材の受け入れにあたっては、「副業人材に任せたい業務範囲や分野についてしっかりと設計をした上で受け入れることが重要」とも述べられました。

最後に、株式会社ローカルフラッグ運営の「ふるさと兼業」事業についてご説明いただきました。ふるさと兼業は「熱意と共感で選ぶ」副業・兼業特化型人材採用プラットフォームで、会社や経営者の想い・ビジョンや事業の趣旨に共感した人材を募集できるため、当事者意識の高い優秀な人材を採用しやすいそうです。また、担当コーディネーターがプロジェクトパートナーとして、何を副業人材と一緒にやっていくか、といった適切なマッチングを生み出すために重要なプロジェクト設計や、その後の事業展開まで継続してサポートするといったトータルでの支援が可能であることをご説明いただきました。

3.松林威寿様による事例紹介

3.松林威寿様による事例紹介

最初の事例紹介では、実際に副業人材を採用された、株式会社松林の代表取締役松林威寿様にご講演をいただきました。同社は明治年間に石油採取業者として誕生し、現在は燃料油配送事業を営まれています。同社では、中長期的な売上拡大を図る中で、M&Aを検討するとともに、組織体系や評価制度などについても精査し、より良いものに変革することで企業価値をさらに高めたいと考えるようになりましたが、社内人材だけで組織改革を実施することに限界を感じておられたそうです。過去にはコンサルを活用したこともあったようですが、企業文化に合わなかったそうです。

そこで、京都府プロフェッショナル人材戦略拠点より副業人材活用についての提案を受け、株式会社ローカルフラッグを介しての人材紹介に至ったそうです。面接基準として、「社長経験者」、「組織改革・人事評価制度作成に携わった経験がある人材」、「自社の価値を引き出してくれる人材」、「人間的に尊敬できる人材」を設定し、最終的には、広告代理店の代表取締役を務められた方を採用されました。募集人材について、株式会社ローカルフラッグを介してだけでも13名の応募があり「全国的に募集すれば地方企業でもこんなに多くの応募あるのか」と驚かれたそうです。

いざ実際にその副業人材を受け入れるとなると、社内の一部人材には過去にコンサルを活用した際の経緯から抵抗感はあったようで、「受け入れる側に準備が必要であることを実感した」と述べられました。現在ではプロジェクトチームを組んで、社内人材へのヒアリング等により課題への意識をすり合わせしながら、副業人材と幹部レベルの人材が一緒に組織改革を推進されているそうです。

松林様は、副業人材を採用し、一緒にプロジェクトを推進する中で「自社の良さや価値について再認識した」「当初目指した組織体制が必ずしも正解でなく、新たに最適な組織体制を検討するきっかけとなった」「組織改革で重要な各種マニュアルの作成につながった」と述べ、10年後に向けた中長期計画の策定など、今後の事業の展望についても語られました。

4.大滝雄介様による事例紹介

4.大滝雄介様による事例紹介

次の事例紹介では、新築・リフォームの設計施工等を手がける株式会社大滝工務店代表取締役の大滝雄介様にご講演をいただきました。大滝様は、「強い会社を作るために確固とした経営姿勢を作りたい。新たな経営理念を作る必要がある」とお考えになり、2017年に経営理念を社内で作られたそうですが、改善の余地を感じておられたそうです。

その後、株式会社ローカルフラッグ運営の「ふるさと兼業」を活用して、改めて経営理念を考え直すために人材募集を開始すると、「ふるさと兼業」のWebサイトは開設後まだ間もなかったものの、同サイトを通じて副業人材2名の応募があり、うち1名を採用。プロジェクトを立ち上げ、経営理念の策定を進めることになったそうです。

実際にプロジェクトを開始してみると、大滝様は「副業人材の方に任せているだけではプロジェクトが円滑に進まない」と思い至り、副業人材とともに自らもプロジェクトの推進役を担うことで、新たな経営理念の策定を完遂。新たに策定した理念を前面に打ち出して求人募集したところ、全国からの申込数が大幅に増加。経営理念の策定により、会社のミッションやビジョンがクリアになり、次の事業展開にもつながっているそうです。

最後に、副業人材を実際に採用して気づいたこととして、「副業人材に任せっきりでは上手くいかないこと」、「副業人材が生み出す結果のみに注目するではなく、一緒に活動することで自社が動き出す契機としても活用できること」、「副業人材を採用することでモヤモヤしていた自社の課題が明確になったこと」の3点を挙げられました。

5.質疑応答

質疑応答では、大滝様から松林様に「副業人材の方にどのように活動していただいていますか」とご質問があり、ご回答を元に、副業人材の活用方法についてさらに話が広がりました。

松林様は「あらかじめ募集の際に『経営者経験者』という要件を出して経験豊富な人材を採用されたからこそ、副業人材に大部分を任せています」と述べられました。大滝様は「当社の経験からすると、最初から副業人材に完璧を求めすぎない選択肢もあると思います」と述べられました。

*終わりに

京都府プロフェッショナル人材戦略拠点では、プロフェッショナル人材採用による中小企業の皆様への支援を強化すべく、今後もイベントやセミナーの開催、支援体制の整備・強化を行って参ります。

最新情報は『京都起業~承継ナビ』をご覧ください。